イラスト:古谷充子
気の進まない誘いや依頼なのに、断り切れずに応じてしまうことはありませんか? のべ9万人以上の臨床経験を持つ心理カウンセラー・大嶋信頼さんが、上手に断るテクニックを教えます(構成=山田真理 イラスト=古谷充子)

断れないのは脳がフリーズした状態

私は心理カウンセラーとして30年近く、人間関係に悩む人からの相談を受けてきました。その方たちの多くに共通するのが、「NOと言えない」悩みです。特に『婦人公論』世代の女性は、家族やご近所づきあいなど固定化した人間関係にしばられ、地域や職場でもいろいろと気を使う中で、「断りたくても断れない」ジレンマに陥りがちではないでしょうか。

なぜ人は、誘いを受けたり何かを頼まれたとき、断れないのでしょうか。そんなとき脳の中では、複数の記憶や情報が同時に湧き上がり、「脳がフリーズした」状態になるのです。

たとえば「相手に嫌われてしまう」「あのときのように嫌な目にあうかも」「仕事をクビになったらどうしよう」など、ありとあらゆる不快な思考が押し寄せて、それが脳の働きを阻んでしまうのです。

でも実は、「断ったら嫌われる」は、自分が生み出した妄想の産物にすぎません。長年カウンセリングをしていますが、お断りをし続けた結果、人間関係がすべて壊れて孤独になったという例を、私は1ケースも見たことがありません。むしろ、断ることから新しい関係が始まるのを何度も目の当たりにしてきました。