地焼きうなぎと土竈飯のセット、6000円。一人一尾を炭火で焼き、炊きたてのご飯とともに提供するため、注文から20~30分ほどかかる。ご飯の上にかば焼きの器を重ねて登場。土鍋が呼吸することにより、うなぎは蒸らされてやわらかくなり、ご飯もふっくらとする。鍋は滋賀県の再興湖東焼の陶芸家・中川一志郎作。汁ものは蛤の吸い物


炭火焼きの鰻を京の風情とともに

うなぎのかば焼きは、関東では背開きしたものを白焼きにして蒸した後たれ焼きにするが、関西は腹開きで、蒸さずにそのまま焼く。しかし、関西でも最近は関東風が増え、地焼きの店は少なくなっている。その中で昔ながらのスタイルと味を守っているのが、ここ「大國屋鰻兵衛」だ。オープンして2年だが、本店は京都の台所・錦市場で100年以上続く、鰻と川魚の専門店「大國屋」。メニューは国産うなぎの炭火焼きと土釜で炊いたご飯のセットだけ。三代目主人・山岡國男さんが注文を受けてから串打ちしたうなぎを生から焼き、同時進行でお客ごとに土釜でご飯を炊き上げる。

皮目をしっかり焼き、身はうっすら焼き色をつけてからつけ焼きに。炭火の効果で身はふんわり、皮は香ばしく、深い味わい

「鰻は、皮は香ばしく、身はふっくらとし、蒸したんとは全然違う食感があります。白いご飯もおいしいので、まずはご飯だけ食べてもらって、あとはお好きなように」と山岡さん。こってり甘い味を想像するが、たれは控えめで思いのほかあっさり。うなぎの旨みや香ばしさが口いっぱいに広がり、一人で一尾をぺろりといただけてしまう。調味料はほぼ京都産。醬油は澤井醬油、酒は佐々木酒造のものを使う。店内は和の風情が漂い、聚楽壁に網代の天井、坪庭まである。土鍋も器も作家もので、京都の美味美趣にひたれる。