「チェアリング」提唱者のひとり、パリッコさん(左)と筆者。お気に入りの場所に持参の椅子を置けば、そこはもう自分の空間
誰かと集まったり、外出もままならない日々が続くコロナ禍の日々……。お金をかけず、ちょっとしたアイデアで日常に風穴をあけられたら、きっと楽しいはず。それを実践している人たちに話を聞いてみた。3人目は「パリッコさん」。アウトドア用の椅子を持って出かける「チェアリング」を楽しんでいます。(取材・文=山田真理)

雑誌やウェブの記事として発表したところ…

変わりやすい春の陽気にやきもきしつつ、てるてる坊主を作るくらいの勢いで取材当日を待っていたのが「チェアリング」。アウトドア用の椅子を持って公園や水辺などへ出かけ、ひとときリラックスするという楽しみ方のことだ。

実は前々から気にはなっていて、昨年のコロナ禍で飲み会ができない友人同士、「これなら三密にならずに会える!」と盛り上がり、私も通販でスタンダードなタイプを一脚購入していた。ちなみにお値段、税込1082円。しかし一人が親の介護で忙しくなり(そういうお年頃)、そのうち季節も冬となり、クローゼットで眠ったままだったのだ。

「そんなふうに『今の時代にこそ求められる新しいリラックス術!』みたいに持ち上げられると、何かびっくりしちゃいますね」と笑うのは、都内在住のライター、イラストレーターのパリッコさん(42歳)だ。

「もともと僕とライター仲間のスズキナオさんが5年ほど前に雑誌の仕事で、面白いお酒の飲み方の一つとして無理やりひねり出したものなんです。椅子を外へ持ち出して飲むというだけのことですが、やってみると予想以上に気持ちが良くて。『次はどこでチェアリングする?』と冗談っぽく呼ぶようになったのが始まりです」

その後も2人であちこちの公園、河川敷、海辺でチェアリングを楽しみ、雑誌やウェブの記事として発表。飲み助や、ちょっと変わったアクティビティ好きの間で話題になっていたのだ。

「予想外だったのは、おしゃれな人たちが気合いの入ったチェアリングの写真をSNSに投稿し始めたこと。最近も女性誌で『公園チェアリングのおすすめコーディネート』みたいな特集が組まれていたりして(笑)」