自分の椅子が自分の場所に
「この気持ち良さって、『自分の椅子』を持ち込むことでそこが『自分の場所』になることも、きっと大きいと思うんです」とパリッコさん。椅子を持って場所を探す経験をすると、公園などに備わったベンチには「ここに座りなさい」「この景色はここから見るものです」と規定される不自由さがあることが実感できる。
「お台場海浜公園では、波打ち際ギリギリの場所にも座ってみたんですが、設置されているベンチではできないことだから、なんだか『勝った』みたいな気になったり(笑)」。そんなふうに、街や風景を自分なりの視点で読み替える快感のようなものも、チェアリングにはあるのかもしれない。
もちろんアルコールに限らず美味しいお茶を買ったり、自前のポットを持ち込んだり。お弁当を楽しむのもいいだろう。友だちと会うだけでなく、一人で読書や音楽に浸ることもできる。
「自分の場所という意味では、家の庭やベランダでも十分にチェアリングは楽しめます。だまされたと思って一度、椅子を屋外に出して座ってみてほしいですね」とパリッコさんは教えてくれた。
発想の転換を楽しむ
コロナ禍の不自由な献立をミニチュア作品に仕立てたくんくんさん、厄介ものの抜け毛で猫たちと遊ぶ山崎さん夫妻、椅子で街の風景を読み替えるパリッコさん。3組に共通するのは、発想の転換を楽しむ姿勢かもしれない。
コロナ禍で行動が不自由だから、お金をかけたくないから。そうしたネガティブな視点ではなく、「だって面白そうだから」とポジティブに考えてみる。そうした心の持ちようを改めて教えてもらった取材だった。