「冷蔵庫がない生活も、それが当たり前になれば大して不便ではなく、むしろ余計なストレスが減って、私にとっては楽なんです」(撮影=大河内禎)
東京郊外にある築60年の家。声をかけてガラガラと玄関の戸を開けると、奥からアズマカナコさんが顔を出した。庭に面して春の日差しが柔らかく入る縁側が目に入る。1階に6畳の和室が3部屋、2階に1部屋。台所を覗くと、あれ? 何か足りない……。そう、冷蔵庫がないのだ(構成=玉居子泰子 撮影=大河内禎)

必要な食材だけ買えばストレスにならない

冷蔵庫のない暮らしは、10年目です。わが家は、エアコンやストーブがなく、台所も涼しいので、秋冬は牛乳なんかも常温で2日は持つんですよ。春夏は大きめのクーラーボックスに冷たいものと一緒に入れておけば、1、2日は大丈夫。冷蔵庫がない生活も、それが当たり前になれば大して不便ではなく、むしろ余計なストレスが減って、私にとっては楽なんです。

冷蔵庫があった頃は、気づくと賞味期限間近のものが出てきて「早く食べなくちゃ!」と、追われるように料理をしていたこともありました。でも今は、次女の幼稚園の送り迎えのついでに、その日食べたいもの、必要なものだけを購入するので無駄がありません。

それに、梅干しや漬物、ジャムを作ったり、野菜の葉や皮、果物の種や皮を乾燥させておいたり、肉や魚も佃煮にしておけば常温保存できます。そんなふうに、日々どうやって食材を無駄にせず保存できるかなって考えるのが楽しいんです。