イラスト:星野イクミ
「女性活躍」のスローガンが叫ばれるようになった昨今。選択肢が増えることは歓迎だけれども、自らの道のりを振り返ると思うことも多々あってーー。江頭さん(40歳、主婦)は、仕事を持ってキラキラしていた母の価値観に影響され、自信が持てないという

子どもが生まれた時、仕事を辞める決断をした

専業主婦になり10年以上が経った。さほど料理が好きなわけでも、掃除が得意なわけでもないのに、気がつけば人生で一番長く続けている仕事が、子育てと家事になっている。

結婚するまで、自分は絶対専業主婦にはならないと思っていた。一日中家の中で家事だけをする毎日は、きっともの足りないだろうと感じていたからだ。

それに、わが家は祖父母が自営業者で、母は大手企業で働くバリバリのキャリアウーマン。「働かざる者食うべからず」がモットーで、小馬鹿にするように「主婦は家でテレビばかり観ていて羨ましい」というのが母の口癖だった。私の育った環境において、専業主婦という選択肢はなかったのだ。

大学卒業後、私は営業職についた。体力的にキツいこともあったが、働くのは大好きだった。努力すれば結果が出る。報酬もあるし、感謝されたり認められたりする。やりがいを感じる大切な居場所でもあった。

それでも、結婚して子どもが生まれた時、仕事を辞める決断をしたのは、これまでのような時間の使い方では家庭と仕事の両立は難しいと思ったからだ。子どもの預け先もみつからなかった。そして何より、仕事でいつも家にいなかった母に、私自身が寂しさを感じていたのを思い出したのだ。