生姜焼きや切り干し大根、ひじきの煮物…

そんなある日、紀香さんはインターネットで、プロのシェフが自宅に出張して食事を作ってくれる「シェアダイン」というサービスを知る。登録されているシェフたちのプロフィールを眺めていると、フレンチレストランで料理長を務めたREKIさんという男性が目にとまった。彼自身も母親の介護経験があり、介護食アドバイザーの資格も持っているという。

「あ、この人なら、ちょうどいい加減でおいしいものを作ってくれるかも、と思ったんですよね」

さっそく、1回8580円(税込)の「介護お助けプラン」に申し込んだ。名前こそ「介護」とつくが介護食には限らないこと、シニアの方においしく食べやすい料理を提供する、というプランの説明が紀香さんの背中を押した。

「サイトに載っていた料理の写真は、私が見ても『わあ、食べたい!』とそそられるものばかりでした。これなら、両親も喜んでくれるんじゃないかと思って」

1回3時間(買い物代行なしの場合)の訪問で作ってもらえるのは12品、16食分。そのまま冷蔵庫に保存してもいいし、できたてをすぐ食べてもいい。少人数の世帯には、冷凍保存が可能なメニューも用意されている。

申し込んだその日のうちにシェフからメールが届き、献立の提案があった。生姜焼きや切り干し大根、ひじきの煮物、筑前煮、肉じゃが……両親の好みに合い、かつ翌日以降もおいしく食べられそうなものばかりだ。紀香さんはさっそくOKの返事を送った。

「シェフには、両親が味つけや見た目にこだわりが強いことを伝えました。料理の代行サービスを利用したのは初めてだったのですが、食材の切りかたの希望までかれるんですね。驚きました。母には小さめに、父は普通でいいとか、味つけは薄くしすぎないでほしい、などと細かいお願いができたんです」

訪問の前日には、シェフから実家の冷蔵庫に残っている食材を尋ねられた。なるべくそれを使って、足りないものだけ買っていくという。

「最初のうちは、メールだけでやりとりすることが不安でした。でも、文面から受ける印象もよく、問い合わせるとすぐ返信がきて、信頼できると思えました」