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自分以外に担ってくれる人がいない。体力的にできることが限られてきた──。そんなとき、人の手を借りるにとどまらず、より充実したサービスを受けられたらいいと思いませんか。代行サービスを利用している3人の女性に話を聞いてみた。老いた親の食事、ペットの散歩を体験してみるとーー(取材・文=玉居子泰子)

前編●「庭の手入れ、風呂場の掃除…プロの手をうまく借りる、75歳の暮らし」

舌が肥えた両親のためのディナー

代行サービスは、離れて暮らす老親のために、子どもが依頼するケースも増えている。東京都在住の松本紀香さん(55歳、仮名=以下同)は、近くに住む80代の両親のための食事作りを頼める人を探していた。

紀香さんの母は、ここ数年で認知症が進んだ。会社を経営していた父は、家事がいっさいできない。母が利用している介護サービスの業者に頼めば、別料金で父の分まで料理を作ってもらうことはできるものの、「作りにきてくださる方を何度替えたことか……」と紀香さんはため息をつく。

2人とも舌が肥えていて、食事に強いこだわりがあるのだ。高齢者向けに薄味でとろみをつけて調理されたものは、「おいしくない」と言って食べない。

「盛りつけも含めて『おいしさ』を感じるものじゃないと、満足できない人たちなんです」

結局、紀香さんが週に4〜5日実家に通い、夕飯と翌日の朝食を準備して帰っている。

「私は料理が好きで、作ること自体は苦ではないんです。でも、買い出しから調理まで週5日こなす生活を2年半続けて……さすがに、体がつらいと感じることが増えてきたんですよね」