名優・阪東妻三郎の三男として生まれて
「うん? 田村正和像? 僕が二枚目? そう言われても、あっそう、それ、俺のこと? という感じですよ。昔は暗〜い青年ばっかりやっていて、今はスーッとした二の線も、コメディもやるし、これが田村正和だ、というのはあまりないような気がします」(『婦人公論』2007年6月7日号「自称・怠け者のストイシズム」)
とは、田村正和さんが『婦人公論』に登場した際の言葉。まさに陰りあるダンディな二枚目役からコミカルな夫役、頑固な父親役に、クセの強い警部補役まで。50年以上幅広い役柄で視聴者を惹きつけてきた田村さん。そんな稀有な俳優の訃報が入ってきた。
報道によると、4月3日、心不全のため東京都港区の病院で亡くなったという。享年77。
田村正和さんは、1943年、日本映画史に名を刻む名優・阪東妻三郎(1901ー1953)の三男として誕生。長兄の故・田村高廣さん、弟の田村亮さんとともに「田村三兄弟」と呼ばれた。高廣さん曰く「撮影所に一歩入れば阪東妻三郎であって、もはや田村伝吉では」なかったという人気役者の父とは、普通の父親と子どものふれあいはなかったという(『婦人公論』1987年10月号)。