「いろんな作品に出演しましたが、本当にいいなあと思えるものは数えるほどしかないですね」(撮影:冨永智子/『婦人公論』2007年6月7日号より)

よくここまで来たな、この程度だよ

弊誌のインタビューでは自身を「怠け者」と称したいた田村さんだが、現場に対する姿勢は、NGを出さないことで知られ、セリフは完璧に覚えて現場に臨んでいたという。そのストイシズムはどこから来るのかーー。

「僕はね、田村正和という俳優をそんなに買ってないんですよ。よくここまで来たな、この程度だよ、って思う。これまでいろんな作品に出演しましたが、本当にいいなあと思えるものは数えるほどしかないですね。『古畑任三郎』にしても、パート3まで続いてスペシャルを何度かやっても、いいと思うのは2、3本しかない。自分で自分のものを見ると、第三者的に見ますから。

好きな俳優はマーロン・ブランド。(略)それからロバート・デ・ニーロ、アル・パチーノも素晴らしい。僕はデ・ニーロと同い年なんです。だから、わかるでしょ? 同じ仕事をしていると、彼らのレベルで、自分を比べてしまう。最近は『後はどういうふうに消えていこうか』なんてことばかり考えます。僕らの年の男は、みんな、そうじゃないかな」

お茶の間に鮮烈な印象を残した名優・田村正和は、もういない。