家事の負担は減らしたいけれど、何から減らせばいいのかわからない──。そんなあなたの疑問に、長く家事研究に携わってきた佐光紀子さんが答えます。(構成=村瀬素子 イラスト=星野イクミ)

「ちゃんと家事をやらなきゃ」という呪縛

私は重曹や石鹸、ほうきなど昔の掃除方法を取り入れた本を書いたこともあり、「丁寧な暮らしをしている」と誤解されがちですが、むしろ手抜き家事が専門(笑)。仕事をしながら完璧に家事をこなすなんて無理ですから。苦手なことは「できません」と家族に宣言していました。

家事は女の仕事であり、ちゃんと家族の世話をするのが良き妻、良き母。そんな古い価値観に縛られている人はまだまだ少なくないようです。

コロナ禍で家族が家にいる時間が長くなり、朝昼晩の食事など、負担が増えて大変、といった声が聞かれます。私の友人も「外飲みできなくなった夫が家で晩酌するため、おつまみを作らなきゃいけない」と嘆いていました。文句を言いながらもちゃんと家族の世話をする女性たち。その結果、イライラやストレスは募る一方です。

私は仕事をしながら3人の子どもを育ててきました。彼らの自立と時期を同じくして、母が病気になったので、今は週2回ほど実家に通っています。子育てが終わったら親の介護が始まる。50 代、60 代はそういう年代ですよね。

でも若いときのような体力がありませんから、歳とともに家事がしんどくなってくる。長年刷り込まれた「ちゃんと家事をやらなきゃ」という呪縛からそろそろ自分を解き放たないと、こちらがつぶれてしまいます。残りの人生を楽しむためにも、家事を少し手放してはいかがでしょうか。