「父と私は、母の死に方ではなく、太陽みたいに明るく周りを照らしてきた母の《生き方》をみなさんに覚えていていただきたいという思いがありました」(撮影=宮﨑貢司)

昨年から、一周忌にどのような会を行うかについて、事務所の方から私たちに相談をいただいていました。でも今年になってもコロナ禍が収まらない状況で、やはり人をお招きする形でのお別れ会を開くのは難しいということに。

私自身は、何もしないままその日を迎えることは考えられず、何か別の形で母を偲び、みなさんに感謝をお伝えしたいと思いました。

 

「私のときも、音楽葬にしてね」

お葬式ができていないことから、そうだ、ネット配信の音楽葬にしよう、とひらめいて。自分の両親を音楽葬で見送っていた母は、無類の音楽好き。「私のときも、音楽葬にしてね。曲はロッド・スチュワートの『スマイル』で」と言っていたことを思い出したのです。

母がコロナウイルスにより突然命を奪われたことは、みなさんからかわいそうだと言われる出来事だったと思います。ですが、父と私は、母の死に方ではなく、太陽みたいに明るく周りを照らしてきた母の「生き方」をみなさんに覚えていていただきたいという思いがありました。音楽葬がそのきっかけになればと思ったのです。

大好きだったジャズやミュージカル音楽を流しながら、いつも笑顔だった母をにぎやかに明るく偲ぶ日にできたら……。そうテーマが決まったとたん、何かに突き動かされているかのような勢いで実現へ向けて動き出していました。

3日間限定の配信でしたが、たくさんの方に見ていただき、「岡江さんを偲ぶことができて、気持ちの節目になりました」などという温かい感想も頂戴して、私は達成感でいっぱいになりました。

「悩んでいる時間がもったいない」と、どんどん実行していく力、元気な体、前向きさ――考えてみたら、これらはすべて母が私に与えてくれたものでした。きっと、母も喜んでくれたと思います。

うれしかったのは、配信後に父がすごくほめてくれたこと。「ありがとう、よくやったね」と、何度も何度もうれしそうに。ああ、本当にやってよかった。私は喪失感を抱えたままの父にも「節目」を迎えさせたかったんだ、と気づきました。