「うれしかったのは、配信後に父がすごくほめてくれたこと。ああ、本当にやってよかった。私は喪失感を抱えたままの父にも《節目》を迎えさせたかったんだ、と気づきました」
女優・タレントの岡江久美子さんが新型コロナウイルスによる肺炎で逝去したのは、2020年4月23日のことでした(享年63)。一周忌を終えた娘の大和田美帆さんのいまの思いは(構成=平林理恵 撮影=宮崎貢司)

母が亡くなったことに心が追いついていかない

岡江久美子さんの没後1年となるその日に、夫の大和田獏さんと娘の美帆さんは、音楽葬「スマイル! 岡江フェスティバル~音楽とともに~」をオンラインで動画配信した。ピアノの生演奏が流れ、岡江さんの友人たちが楽しい思い出話で故人を偲ぶなど、心あたたまる雰囲気の会となった。

そのなかで、これまで取材を受けてこなかった獏さんは涙をこらえつつ、初めて妻の最期を語った。この生配信を企画し、撮影も手がけた美帆さんは、「ようやく私のなかで何かが完結しました」と振り返る。

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今日は母のワンピースを着てきました。服のサイズはぴったりなんです。

2020年の4月に母と私たち家族に起きたことをお話ししたいと思いますが、いまでも実感がありません。父と私は入院した母を見舞うことも、看取ることも、お葬式をすることもできませんでした。

それ以降、心の置き所がないままに月日は流れ、母が亡くなったことはわかっているのに、心が追いついていかないという状態が続いています。いまも、日常のふとした瞬間に突然涙があふれてきます。