「郵便局には、その局独自の消印があるで」という、いまは亡き母の一言から始まった「風景印収集」もはや10年。一目ぼれから始まった趣味に、今ではもう一つの楽しみもついてきて……。先立つものへの不安はあるけれど、悔いなく生きるために《好き》を優先したっていいじゃない!
橋と紅葉の繊細な図柄に一目ぼれ
もしその存在が消えてしまったら、私の人生から彩りがなくなる、というものがある。それは「風景印」だ。風景印とは郵便局で押してもらえる消印の種類で、正しくは「風景入通信日付印」という。通常の消印よりもやや大きめの円形で、円のなかに、その土地ならではの自然風景、建築物、特産品などの図柄があしらわれている。
郵便局によっては、形は円とも限らない。たとえば青森県にある郵便局ではりんご、焼き物の街ならば急須などの形もあり、そのなかにさらに図柄が描かれているのだ。
風景印は、郵便局で63円以上の切手を購入し、手紙や葉書、あるいは別紙に貼って窓口で押してもらう。ただ、日本全国すべての郵便局にあるわけではなく、私はもっぱら自家用車で行く趣味の旅行の道中でもらっている。
もともと旅先の駅や博物館などに置かれているスタンプを収集する小さな趣味はもっていたが、風景印収集を始めて10年以上が経つ。きっかけは、愛知県へ旅行していた際に聞いた「郵便局には、その局独自の消印があるで」という、いまは亡き母の一言だった。
その時は、わざわざ旅先で郵便局に立ち寄るのを面倒に思ったが、持参していたコピー用紙に切手を貼って押してもらうことに。外で風景印を改めて見てみた時、観光名所の橋と紅葉の繊細な図柄に一目ぼれしてしまったのだ。そこから、私の風景印収集人生がスタートした。