風景印収集用の無地のノートを作り、自宅や職場などの生活圏内にある郵便局を訪れる日々。せっかく行っても置いていない局もあってがっかりすることはあったが、それでも徐々に増えていく風景印を眺めていると嬉しかった。図書館で全国の風景印が載っている本を見つけてからは、日本中に収集旅に出かけてみたい気持ちに──。

その夢を実現すべく、旅仲間の友人を巻き込むことを考えついた。2人のほうが楽しいということもあるが、駅から離れている郵便局が多いため、車でまわったほうが効率的。それならばひとりが運転し、もうひとりがナビをすれば、と考えたのだ。もともとその友人も私と同様、いい歳をして旅先でスタンプを押すような人。そんな計画を考えていたら、運よく彼女から旅の誘いがあった。

風景印の世界への招待は、無理やりではなく、さりげなく行うようにしたい。そこで旅の初日に郵便局に立ち寄り、押してもらった風景印を友人に見せてみる。友人はじっくりとそれを観察すると「私ももらうわ」と言った。気づくと友人のほうが積極的になり、旅の後半には満足そうな表情に。無事に風景印の世界に導くことができた。

 

10万円の出費も、惜しくない

彼女とは年2回のペースで旅行している。関西圏はもちろん、九州にも足を運び、最近では群馬県を訪れた。1回の旅行でだいたい3泊以上するため、費用は10万円ほどかかる。でも、出費は惜しくない。そもそも風景印をどう入手するかを最優先事項として、旅の計画を立てているのだから。

郵便局は土日が休みのため、旅行の日程は平日をメインにする。郵便局に到着したら助手席に座っているほうが先に降りて窓口に並び、時間を節約。観光もしつつ、多い日で1日10軒ぐらいの郵便局を巡るので、少しの時間もムダにしたくないのだ。

また、郵便局は基本的に土日や17時以降は閉まってしまうが、すぐには諦めない。「ゆうゆう窓口」があれば、押してもらえる可能性があるからだ。こんな自分たちを、「2人とも風景印に取り憑かれている」と言って笑い合う。