相手が変わらないのは、オブラートに包んで言うから
次に「正しく伝わっていない」というケースです。なぜ私たちは、言いにくいことをオブラートに包むなどして、回りくどく言ってしまうのでしょうか。それは、「はっきり言うと相手を傷つけてしまう」「悪者になりたくない」という心理が働くから。
しかし、そのために問題が解決しないのでは意味がありません。夫のニオイを自分が不快に思っているのに「隣の奥さんに指摘された」と伝えたり、清潔にするためにお風呂に入ってほしいのに「疲れが取れるから毎日入ったほうがいいわよ」などと遠回しに言ったりする。これでは相手に正しい意図が伝わらず、状況は変わりません。
伝えたいことを相手に確実に伝えるには、「事実を、シンプルに、丁寧に」というルールがあります。
事実とは「ニオイが気になる」ことですね。シンプルにというのは、余計なことを付け加えない、回りくどく言わないこと。そして丁寧にというのは、言い方を丁寧にするという意味ではなく、温和な表情ややさしい口調、相手に対して思いやりの気持ちを持って話すことを指します。ではこのルールに則って、ニオイの指摘をするとどうなるでしょう。
「私、最近あなたのニオイが気になるんだけど、対策を始めない?」
ポイントは、主語が「私」であることです。これは「アイメッセージ」といい、自分を主体にして話す方法。これが丁寧に伝えることにもつながります。そして事実をシンプルに。
逆に、好ましくない言い方は「あなた、自分のニオイに気づいてる? もっとちゃんと洗ったら」。
こういう言い方をされると、相手は不快に思い、かつ真意が正確に伝わりません。というのもこちらは主体が相手。「気づいているか」という質問形式にすると、受け手は攻撃されていると感じます。また、「ちゃんと洗う」という表現は人によって捉え方が異なるので、「後頭部と、足の指の間」など、具体的に伝えなければなりません。