「《女優》と呼ばれるより、《俳優》《役者》というスタンスでお仕事をしていくほうが、私には合っているんじゃないかと思います。」(撮影:初沢亜利)
男役として宝塚歌劇団花組のトップスターを5年半務め、2019年秋に退団。宝塚時代の代表作『ポーの一族』で退団後の初舞台を踏んだのを皮切りに、NHK朝の連続テレビ小説『おちょやん』で目力の強い女優・高峰ルリ子を演じたほか、民放ドラマにも個性的な役で出演している。現在は、どんな心境で仕事と向き合っているのだろうか?(構成=内山靖子 撮影=初沢亜利)

自分が《女優》だとは到底思えない

おかげさまで、次々とやりがいのある作品に恵まれて、毎日がとても充実しています。とはいえ、《女優さん》と呼ばれることには、いまだにまったく慣れていません。私にとって《女優》のイメージは、その人がその場にいるだけであたりの空気が澄み渡っていくような、いわばオアシスのような存在。

例えば、今、ドラマでご一緒している有村架純さんなどは、まさに《女優さん》そのもの。ただそこに座っているだけで、キラキラしたオーラが放たれているような魂の美しさを感じます。

それに比べたら、自分が同じ《女優》だとは到底思えない。おこがましいかもしれませんけど、《女優》と呼ばれるより、《俳優》《役者》というスタンスでお仕事をしていくほうが、私には合っているんじゃないかと思います。

そもそも、宝塚歌劇団に入団してからずっと、「宝塚がすべて」という思いで舞台に立ち続けてきたので、退団したらいったい何をしたらいいのか、当初はまったく思いつきませんでした。宝塚があまりにも好きすぎて、「タカラジェンヌでなくなってしまった自分はどうなっちゃうんだろう?」という不安にかられ、一時は、実家の静岡に戻ろうかと考えたこともありました。

でも、退団後に、長年応援してくださったファンの方たちから「また、舞台に立っている姿を見たい」というお手紙をたくさんいただいて、やっぱり表現する仕事を続けていきたいと思うようになりました。