70代からは「不便が便利」が合言葉

自分ではいまもやる気満々ですが、この先も仕事を続けていくためには、体力をつけておかなければなりません。同世代の友人たちも、口々に「これからは財力と筋力だ」と言います。財力はもう無理でも、筋力ならまだ間に合う(笑)。70代からは「不便が便利」を合言葉に、できるだけ体を動かすようにしています。今日も、自宅から事務所まで1時間以上かけて歩いてきました。

それでも、若いときに比べれば、できないことは日に日に増えていきます。でも、できないことはできないのだからしょうがない。ならばいまの自分に合った生き方をしよう、とライフスタイルを少しずつ変えるようになりました。

まずは、何事もゆっくり行う。青信号が点滅していたら、もはや走りません。「いま走れば渡れるかもしれない!」と思っても、それで転んだら、「やっぱり私、トシだから……」と落ち込むのが人間です。年齢とともに、動作は余裕を持って、ていねいに。そのほうが優雅でステキな女性に見えますから。

もうひとつは、同時にいろいろなことをやらない。だから《ながら族》はやめました。かつて、テレビを観ながら朝食を摂り、仕事のメールチェックをするのはあたりまえのことでした。でも、いまは朝ごはんを食べるときは朝ごはんに集中し、テレビを観るときはテレビに集中します。そうすると食事中、ベランダに干してある洗濯物が風にそよいでいることに気づいたりして。自然と満ち足りた気持ちになるのです。

それから、現役で旬のスタイリングをするためには、感性を磨き続けなければなりません。街を歩く人のファッションやブランドの展示会など、最新情報をチェックするのが常ですが、一度に大量の情報を入れすぎるのをやめました。

脳の処理能力も落ちていると思うので(笑)、たくさんあるなかから、自分の好きなデザインや色だけをピンポイントで押さえていく。それで十分、世の中の流れをとらえることができます。いずれも、この年齢になってわかった新たな発見でした。