イラスト:コーチはじめ
日本には墓を引き継ぐという慣習があります。しかし、時代とともに家族のかたちや価値観が多様化し、「供養」の選択肢も増えてきました。葬儀・お墓・終活コンサルタントの吉川美津子さんの解説で昨今のお墓事情を学びながら、先々のことを考えるヒントにしてみましょう。今回はお墓の移動や墓じまいを行う際の知識です。(構成=村瀬素子 イラスト=コーチはじめ)

前記事で紹介したお墓の現状を把握したうえで、自分や家族に合った選択をしてください。その際、現地に足を運び、自分の目で確かめることを忘れずに。お墓は新しく建てるにも、別の場所に移すにも、さまざまな手続きが必要になります。ケースごとにみていきましょう。

【ケーススタディ・供養のかたち】
 ●新しいお墓を建てたい
 ●お墓を引き継ぎたい
 ●お墓の移動・墓じまいしたい

<ケーススタディ>
お墓の移動・墓じまいをしたい

「故郷にあるお墓を現在の住まいの近くに移したい」といった理由で、お墓の引っ越しを考える人が増えています。正確には、お墓というよりも遺骨の移動。これを「改葬」と呼びます。

「先祖代々のお墓を守るのは大変なので墓じまいをしたい」という声をよく聞きますが、「墓じまい」は改葬の工程の一部。元のお墓から遺骨を取り出したあと、そのまま放置するわけにはいきません。墓石を撤去して更地にし、墓地使用権を返還します。これが「墓じまい」です。

改葬の流れを簡単に説明すると、まず移動先のお墓を用意します。次に、元のお墓から遺骨を取り出して、墓じまいをする。そして、遺骨を新しい墓地に納めます。

その過程で発生する事務手続きは、次の表のとおりです。書類が多く、やや煩雑に感じられるかもしれませんが、海外旅行をするときの出入国の手順に似ています。