患者の生活背景まで把握してくれるか

これまでお話ししたような条件を満たしていても、やはり人間同士ですから、相性がよいかどうかも大きな要素です。

基本的には、よい医者かを見極めるポイントは、患者さんの話をきちんと聞いてくれるかどうかです。そのうえでどんな質問にも丁寧に答える先生がよいとか、最小限の薬でテキパキと治療する先生がよいとか、自分なりのポイントがあれば判断材料にできます。

また、「血圧が高いので降圧剤を出しましょう」などと、カルテに書かれたことだけを見て治療法を考えるのではなく、じっくり話を聞いて、それぞれの患者さんの生活背景に合った治療法を提案してくれる医者なら信頼できます。

たとえば、私の患者さんに、ウォーキングが効果的な持病のあるおばあちゃんがいるのですが、大きな一軒家でひとり暮らしをしておられる。毎日、家の中の掃除をするだけで体力的に精一杯だそう。日頃の会話からそうした生活背景を知り、この方にウォーキングをすすめるのは無理だから、薬と食事法で対処したほうがいいと判断しました。

また、時折、喘息の発作を起こす患者さんがいますが、原因を伺ってみると、高齢で満足に掃除ができないので家じゅうにホコリが溜まっているとか。この方には喘息の薬を出すよりも、地域の行政に連絡し、定期的に家の掃除をするヘルパーさんを頼んだほうがいいだろうと考えました。

こうしたそれぞれの方に合う治療法、対処法を柔軟に考えるために、かかりつけ医は患者さん一人一人の生活背景をきちんと把握しておかねばなりません。一見雑談をするようにあなたの生活習慣に関してあれこれ質問を投げかけてきて、雑談の中からライフスタイルを把握してくれる。そういう医者がよいかかりつけ医と言えるのではないでしょうか。

病気や治療法についてわかりやすく説明してくれるのはもちろんのこと、「予防」に関して注意を促してくれるかどうかも大切です。

たとえば、女性にとって重要な婦人科系のがん検診を、「そろそろ受けましょう」と教えてくれる。自分では気づかない「予防」の提案をしてくれるのが、よい医者の条件と言えるでしょう。