「自分自身のこともよくわかってきて、このままだと危ないな、と思ったら、音楽を聴いたり走ったり。信頼している友達に話を聞いてもらうという方法も覚えました。」

「その才能を病気からの回復に向けてください」

公判の時はまず「懲役1年」という言葉が耳に入りました。「ああ実刑だ、刑務所に連れていかれる」。そう思ったら、もう後に何を言われているのか全然わからなくなり放心状態に。

ところが判決理由を読み上げる最後のほうで、裁判官の声が明るくなったように感じたんです。最終的な結論は、なんと執行猶予4年保護観察付というものでした。

裁判官は「自分も市民ランナーとしてマラソン大会に出ています」と言って、こう続けました。

「原さんは、世界で戦えるぐらいに努力する才能を持っている人です。その才能を今度は、病気からの回復に向けてください」

何年もひどいことをしてきた私に、こんな優しい言葉をかけてくださるんだと思ったら、すごく嬉しくて。何が何でも絶対に病気を治してやろうと決心しました。

それに、私のケースがこれからの量刑の相場に影響すると言われたことも、心に刺さりました。つまり自分がここから回復したら、この執行猶予は正しい判断だった。でも、また犯罪を重ねたら、再度の執行猶予は間違いだったということになる。私のこれからの行動がほかの窃盗症の人の人生まで左右してしまうのですから、もう自分だけの問題ではありません。

それ以来、万引きは止まっています。食べ吐きの衝動もだいぶ収まりました。自分自身のこともよくわかってきて、このままだと食べ吐きしそうだな、危ないな、と思ったら、音楽を聴いたり走ったり。信頼している友達に話を聞いてもらうという方法も覚えました。少しずつですが、人を頼れるようになってきたと思います。