『私が欲しかったもの』原裕美子 双葉社

「隠さずに生きる」ことが心地よく

3月には、自分の体験を『私が欲しかったもの』という本にまとめました。こうして自分の過去を話すことで、再び家族を傷つけてしまうかもしれない、という不安が頭をよぎることも一度や二度ではありません。

でも、この病の恐ろしさを多くの人に知ってもらい、病気に苦しんでいる人の手助けになりたい、できるだけ寄り添いたくて、恥ずかしいこともさらけ出しています。今はこの「隠さずに生きる」ことが心地よく感じるんです。隠して生きるより、ずっと楽!

もし心に苦しみを抱え、悩んでいる方がいたら、一人で悩まず誰か信頼できる人に思い切って打ち明けてみてください。たとえ直接の解決にはならなくても、心の中のつらいものを受け止めてもらえたというだけで気持ちはずっと楽になります。

話すこと、相談することで、自分は一人じゃないと思えるようになって、前向きになります。今まで一人で抱え、苦しみ耐えてきた人も、少しずつ人を頼れるようになると思います。

私は、五感を使って食事を味わい、楽しむこと、作り手に感謝することを教わりました。朝から晩まで食べ吐きをしていた時には考えられなかったことです。

今、毎回の食事が楽しいです。これって、特別なことではなく、ごく当たり前のことだと思います。でも、私たちにとってその当たり前のことを当たり前にすることがどれだけ難しいかを知っているからこそ、今のこの生活を送れることに、幸せを感じています。

私と同じ病で苦しんでいるひとりでも多くの方に、私の体験が届いてほしい。ほんの少しでも、勇気をもって前に進むきっかけになれば嬉しいです。