「40年近く前に、最期まで過ごすことを見据えて家を建てられたというのがすごい。」(上野さん)

40年近く前に、最期まで過ごす家を建てた

澤地 そもそも私は母を見送った後、50代の時に、一生ひとりで過ごす前提で家を建て替えました。地下に書庫を設け、お客様を迎えるのは2階。いざとなれば1階だけで暮らせるように、台所、食堂、寝室は1階にまとめ、寝室から直接トイレやお風呂に行けるようにしています。

上野 完全におひとりさま仕様のお家ですね。40年近く前に、最期まで過ごすことを見据えて家を建てられたというのがすごい。介護保険がなかった時代は、家政婦さんにずっと来てもらうなんて大金持ちでないとできませんから、私や澤地さんみたいな《おひとりさま》は、最後は施設か病院に行くしかないと思われていました。

澤地 先見の明があるでしょう?

上野 寝たきりやオムツを経験されて、これから先もずっとこの家におられるお考えでしょうか。

澤地 私はここ以外のところで終わる気持ちはないの。今回の経験から改めて、今死んでも悔いがないと感じましたし、そういう時がきてもジタバタしないでしょうね。

上野 ジタバタしないって、まさか誰にも連絡しないという意味ですか?

澤地 そうですね。

上野 そ、そんな……やめてくださいよ。(笑)

澤地 今はまだ文章を書いたり、次の本の準備もできます。それができなくなり、ただ息をしているだけというのは、私はイヤですね。

上野 私はいろいろな高齢者にお会いして、食欲があるのは生きていく意欲があるということだと感じます。何もできなくても、そうやって生きていてもいいんじゃないかと心から思うのですが。

澤地 人それぞれ、選んでよいのではないかしら。もしこの先、私に何かが起きたら、自分の意志で食べなくなるでしょうね。もちろん誰にも言わずに。

上野 うわ~、潔すぎ。(笑)

澤地 延命治療も、望みません。