これでは終わらない。気力を頼りに
上野 寝たきりになられた時、この先、ずっとこのままだったらどうしようと思われました?
澤地 これでもうダメだなんて1回も思いませんでした。私は2015年の11月3日以来、毎月3日に「アベ政治を許さない」というアピール行動で国会正門前に立っていました。転倒したのが2020年5月だったでしょう。翌月の6月3日は痛くて行けなかったので、文章に書いて友達に託して読んでもらって。でも7月からは、車いすで参加しましたよ。
上野 私も何度か参加し、スピーチもしました。瀬戸内寂聴先生90代、大江健三郎先生80代、澤地久枝さん90代。おねえさま、おにいさま方がこんなに頑張っておられるのに、私たちは「あとは私どもにお任せください。安心して引退してください」と言えない、ふがいない後輩です。だから死ぬまで頑張ってもらわなければ。(笑)
澤地 今も毎月行っています。
上野 その気力は、どこから湧いてくるんでしょう。怒りが、生きるエネルギーなんですか?
澤地 そういうわけではないけれど、私はこんなことでは終わらないと思ったのね。痛みはいずれ消えていくだろうし、きっと自分の足で歩けるようになるだろう、と。だからこそ、「オムツします」と、堂々と自分から言えたの。
上野 絶対によくなるという自信と確信を持っておられた。ご本人の気力は何より大事ですから。
澤地 気力というのは、他人が「あなたの気力はこれよ」と渡してやれるものではない。本人がその気にならなきゃダメでしょう。
上野 そうです、そうです。
澤地 今年の4月には、アフガニスタンで亡くなられた中村哲さんを偲ぶ会に出席するため、沖縄に行きました。
上野 えぇっっ! 骨折から1年経たずして?
澤地 そんなに驚かないで(笑)。アメリカに行った時に通訳をつとめてくれた元毎日新聞の方が、一緒に行ってくれて。空港では観念して車いすを使いましたが、それ以外では使いませんでした。
上野 慣れないホテルに泊まるわけでしょう。万が一、そこで転倒・再骨折したらどうしようとは考えなかったんですか?
澤地 考えなかったですね。
上野 楽観的なお方だ。(笑)
澤地 沖縄に行って、しかも殺された方の話をするのは、かなりストレスのかかること。だけど「行かなくては」という気持ちが勝った。たぶん反対されるから、妹には内緒で出かけたけどね。(笑)