頭に繰り返し刷り込まれてきたこと

両親がいるほうが幸せな家庭という思い込みも同じ。ドラマや映画に出てくる幸せな家庭は、たいてい両親が揃っている。かたや、シングルペアレントの家庭はどう描かれてきただろうか。

シングルペアレントの家庭がおしなべて幸せだと言いたいのではない。シングルペアレントと不幸が直線で結ばれたような創作ばかりが世に溢れ、昭和と平成の半分くらいまでは、われわれの頭に繰り返し刷り込まれてきたことを自覚しておいたほうがよいという話。「Seeing is believing」(見ることは信じること)という言葉がある。日本語で言うなら「百聞は一見に如かず」。私たちには、目にしたことがあるものは「ひとつの事実」として認識できる能力がある。

少し前なら、女性駅員の存在など想像もつかなかった。「女にはできない仕事」と思っていた人もいるだろう。しかし、日常的にそれを目視できるようになると、過去の考えは吹っ飛んでしまう。

吹っ飛びついでに卑近な話をしよう。先日、女友達と私の三人で、飽きもせずに恋愛の話をしていた時のこと。ひとりが「一回り以上年上の男性とお付き合いする自分の姿はイメージできるが、一回り以上年下は難しい」と言った。私は「なるほど」と聞いていたが、もうひとりは首を傾げる。聞けば、彼女の周りには女性がうんと年上の幸せなカップルが複数存在するらしい。なるほど、Seeing is believingだ。

さて、私は世間になにを見せることができるだろう。私が楽しそうにしていることで「これも、アリ」と思ってもらえるようなこと。女が未来に恐怖を感じずにいられるなにかを見せられたら、本望だ。


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年齢を重ねただけで、誰もがしなやかな大人の女になれるわけじゃない。思ってた未来とは違うけど、これはこれで、いい感じ。「私の私による私のためのオバさん宣言」「ありもの恨み」……疲れた心にじんわりしみるエッセイ66篇