イラスト:川原瑞丸
ジェーン・スーさんが『婦人公論』に連載中のエッセイを配信。今回は、いま住んでいる街について。ある時友人に住み心地を聞かれたスーさん。果たしてその答えは?(文=ジェーン・スー イラスト=川原瑞丸)

家族連れが暮らしやすい街ではない

ひとり暮らしの女友達から、私が暮らす街の住み心地を尋ねられた。ここに越してきて4ヵ月と少し、働く独居中年女にはすこぶるやさしい街だと、私は力説した。

遅くまで開いているスーパーが複数あり、ひとりで立ち寄れる飲食店も少なくない。商店街には昔ながらの書店や、ひとりでじっくり読書ができる喫茶店が複数ある。マッサージ店はバリエーション豊かで、ウーバーイーツも選び放題。気の利いた手土産を買う店には事欠かず、プチ贅沢ができる生活用品の店もある。都心ならどこへ行くにも便利で、終電後はサッとタクシーで帰宅できる。なにより助かるのは、家族連れより、単独の「若くはない」女が多く街を歩いていること。

裏を返せば、家族連れが暮らしやすい街ではないのだ。私の住むマンションには、赤ちゃん連れの家族は片手に余るほどしかいない。小学生以上は見たことがない。その代わり、ひとり暮らしと思しき中年男女はわんさかいる。分譲マンションではないのも一因だろう。

数年前、仕事で二子玉川へ足を運んだ時のこと。商業施設のカジュアルレストランにひとりで入ると、私以外は全員子どものいる家族連れだった。ジロジロ見られたわけでもないのに、まるで針の筵に座っているようだった。