実家を片づけ、手すりを増やして準備

入院した当初、ちょうど要介護認定があり、母は要介護4に。ひとり暮らしに戻るのは無理なのでは、という意見もありました。

私が若い頃、帰省するのは数年に一度。父が亡くなってからは、年に1回は帰省して母の様子を見てきましたが、要介護4となると、母を東京に引き取ったほうがいいのかな、という考えが頭をよぎりました。でも、母を見ていて、そんな気は一切ないはずだと思い直したのです。

母は長年、小学校の教師を務め、退職後は茶道との先生をしていました。保育園や小学校でお茶の作法を教えるなど、子どもたちに日本の文化を伝えることは母の生きがいになっていた。施設にいる間も、「早く家に戻って、お茶のお稽古を再開したい」と言っていましたよ。

目標があるからこそ、リハビリもがんばることができたのでしょう。そんな母の生きがいを無視して見知らぬ土地に連れていったら、孤独になり苦しませてしまうかもしれない。あるとき母に希望を聞いたら、「地元でいい」と。

そこで、施設から帰ってくる母が安全に暮らせるよう、まず実家の片づけから始めました。食器もよく使うものをまとめてコンパクトに収納。もともと家の中に手すりはありましたが、介護保険を利用して手すりを増やし、介護ベッドをレンタルするなどの準備もしました。

ケアマネジャーさんとも相談して、デイサービスは週2回、それ以外の日はヘルパーさんや看護師さんなど、毎日誰かが訪問するように手配。ひとり暮らしとはいえ、介護保険のおかげで、日々誰かしらに見守ってもらうようにできました。