「お母さん、お正月は家に帰りたかろう?」と聞くと、「帰りたい」と即答。「ほかに何をしたい? お酒は飲みたい?」と尋ねたところ、「飲みたい」と(笑)。(写真提供:日テレ7)
富山にひとりで暮らす母・須美子さんの遠距離介護をしている柴田理恵さん。4年前、須美子さんは要介護4と認定されたものの、自宅でのひとり暮らしを熱望し、リハビリやさまざまな準備を経て実現、要介護1にまで回復した。柴田さんが母の自立のために工夫したことや、気づいたことを聞いた(構成=篠藤ゆり 写真提供=日テレ7)

「延命治療はしません」と答えた

母はもうすぐ92歳。2016年に父が亡くなった後、富山の自分の家でひとり暮らしを続けています。

じつは4年前に一度、命が危ないかも、と覚悟を決めたことがありました。2017年の10月、高熱が出て具合が悪いと母から電話があったので、地元で暮らしている従弟に連絡して、病院に連れていってもらいました。腎臓の数値が悪く、腎盂炎と診断されてそのまま入院することになったのです。

急いで富山に駆けつけましたが、母は「あ~、あ~」と言うだけで会話にならないし、私のことも誰だかわからない様子で。これは熱のせいなのか、それとも、病気やケガをきっかけに進む高齢者特有の認知症なのかわからず、心配でした。

医師からは、「もし何かあった場合は延命治療をしますか」などと、終末医療についての確認もされました。母は元気なときから、「鼻からチューブを突っ込まれて、体じゅうに管をつながれてまで生きたくない」と、ずっと繰り返し言っていたので、「延命治療はしません」と答えました。

1週間後、病院に行くと、「あぁ、理恵か」といつも通りの母に戻っていたので、ほっと一安心。「お母さん、お正月は家に帰りたかろう?」と聞くと、「帰りたい」と即答。「ほかに何をしたい? お酒は飲みたい?」と尋ねたところ、「飲みたい」と(笑)。「じゃあ、先生がオッケーしたら歩く練習をしよう」と励まして。発奮した母は、「お正月に自宅に帰ってお酒を飲む」を目標に、リハビリをがんばりました。