「情報番組を見ていると、コロナ関連の報道は、恐怖をあおってみたり、妙に楽観的であったりのどちらかに振れていることが多い。医療現場の空気感が反映されていません」(坂本さん)

次のパンデミックがやって来る前に

坂本 夏川さんの病院のような地方の200床弱の病院に、中等症、重症の患者さんが集まる体制にこそ、問題があると思います。日本では医師の数は毎年増えていますし、病床数もすごく多い。

問題は、病床や医療従事者をばらまいて、点在させていること。どこもギリギリのスタッフで病床を回転よく埋めていかないと収益が得られない仕組みになっている。このように地域全体で医療が薄く引き延ばされていて、逼迫が起こりやすい。

今後は医療の機能と資源を集約化する必要があります。重症あるいは中等症の患者さんを診られる専門性、必要な資材、十分な人員を備える病院を、計画的に配置する。これによって当然、医療へのアクセスが不便になる地域は出てくるので、それをどうするかは、別途考える必要があります。

ただこれは、次のパンデミックの前に、絶対に手をつけなくてはいけない問題だと思います。

夏川 そうですね。点在とともに偏在も問題でしょう。医師の絶対数がいくら増えても地方の医師の数が増えなければ問題は解決しません。若い医師の中にはきつい診療科は避けたいという人も多く、コロナの診療にあたるそれなりの規模の病院に勤務医として残る医師が減っています。

私はもう少しで42歳になりますが、今の病院の常勤医の中では若いほうから2番目か3番目。つまり医師の高齢化が病院の中で進んでいます。コロナは60歳以上が重症化する、変異株になってからは40歳以上がリスクを抱えると言われていますが、それを診るドクターの年齢が私の病院では40~60代。冗談ではなく、遺書を書いて現場に入った年配のドクターもいました。これを美談にしてはいけないと思います。