8050という深刻な社会問題をテーマに、いじめをきっかけに引きこもりになった青年と家族の再生を描いた小説『小説8050』(林真理子:著/新潮社)

中学の頃、男子からいじめられて

斉藤 僕も明確なきっかけがわからないんです。1つ上の兄貴は、かなり背が高くて。僕は〈チビのくせに〉成績もけっこうよくて、足が速くて運動もそれなりにできたので、「おい、目立ちすぎんなよ」みたいな感じもあったように思います。

 私も中学の頃、男子からいじめられていました。私の場合、ぼーっとしていて体が大きく、だらしなくて忘れ物も多い。この前、実家で昔の通学カバンを見つけたんですけど、底にテストやゴミがぐちゃぐちゃに層になっていて、ゾッとしました(笑)。そのくせ、おしゃべりで目立ちたがり屋で。たぶん思春期の男の子には、気持ち悪い物体として映っていたんだと思います。

斉藤 でも、成績はよくて優等生だったんですよね。

 とんでもない! 当時の通知表を見ると、こんなに悪かったのか、とショックでしたよ。おまけに運動も、からっきしだめでしたから。

斉藤 僕の場合、まずリーダー格の生徒が僕に対して攻撃するようになり、まわりの子や、僕と仲良かったはずの子まで、そちら側に加担して――。

 仲良かった子がいじめる側に加担すると、つらいですよね。

斉藤 でも僕としゃべると、今度はその子がやられるので、僕も距離を取るようにしていました。もしその子までつらい立場になると、自分を責めてしまいそうで。