教師である親に心配をかけたくない
林 斉藤さんはお優しいから……。親にも言えなかったんですよね。
斉藤 親に迷惑をかけてはいけない、ましてや教師の子どもがいじめられていると母親の学校に知られたら、仕事がしにくくなるだろうな、と考えました。だから、自分さえ我慢すればいいんだと思い込んでしまったんです。今思えば、それは間違っていたわけですが。
林 私も親に心配をかけたくないという気持ちがすごくありました。それに、親に言うと、いじめが現実の問題となって家庭に持ち込まれる。それも嫌でした。
斉藤 母親が忙しくしている姿も見ていましたから。朝、ごはんを作ってくれて、急いで学校に行き、帰宅してからもテストの採点とかしていたし。こんな状況で、さらに僕のことで悩みが重なったら負担がとんでもないだろうな、と。
林 親に言いたくないというのは、子どもの最後のプライドを守るため、でもありますよね。親が学校と争う姿も見たくないし。
斉藤 そうなんですよ。兄貴とは仲良かったので、話し合って、言わないことにしたんです。実は兄貴もいじめられていた時期があって。すると、兄弟そろってそうなるのは、自分たちに原因があるのかな、と考えてしまうんですね。
林 あぁ、わかる気がします。どんなことを覚えていますか?
斉藤 う~ん、あまり話したくないです。話すとありありと思い出すので。卒業アルバムの撮影の日も、同級生に「おまえは来るな」と言われたので、集合写真に写っていません。右上の楕円形の窓にいます。先日コントで、卒業アルバムをネタに使おうと思って出してきたら、その時の気持ちが蘇ってつらくなりました。