いじめから逃れ、世界が違って見えてきた
林 部活は確か野球部ですよね。
斉藤 本当は演劇部に入りたかったけれど、両親が野球好きだったので、野球部に入りました。強豪校で、甲子園にも行きましたよ。まぁ、僕はスタンドで応援というポジションですけど(笑)。顧問の先生もいい方だったし、みんな仲良くしてくれた。
30分ほどの自転車通学の間、友達にばったり会わないかなとワクワクしたり、それまでと世界が違って見えて、「あぁ、風景ってこんなに美しいんだ」と。幸福な気持ちになりました。
林 なんか、もらい泣きしそう。でも、わかります。環境が変わることで、問題が解決される場合もあるんですね。
斉藤 だから、今つらい状況にある子たちには、出口や終わりがあることを伝えたい。そうはいっても、当事者には難しいとわかってもいるんですが。
林 そうですね。小説にも、親としてそんな願いも込めました。
斉藤 高校に、授業からすぐ脱線してしまうユニークな先生がいて、その話が面白いんです。「お芝居を勉強したいんです」と相談したら、担任でもないのに「実技だけで受けられるところを探しておくよ」と言ってくれた。
林 演劇専攻のある学校に行かれて、文学座の研究所にも入られたわけですから、すごいですよね。
斉藤 いやいや、研究所では落ちこぼれでした。この前、20年ぶりくらいに母校に行ったら、その先生がまだいらして。お会いした瞬間、「うれしいよ、こんなに売れて」と言ってくれました。