斉藤慎二さん(左)と林真理子さん(右)撮影=藤澤靖子
幼い頃にいじめを受けた体験を持つ斉藤慎二さんと林真理子さん。2人は心に傷を負いながら、どのように克服してきたのでしょうか。斉藤さんは、つらい気持ちを乗り越え、メディアで自身の体験を公表し、今いじめに苦しむ人の相談に答えています。林さんは親として、いじめからひきこもりになった青年と家族の再生を書くことで、今苦しむ人にも希望を持ってほしかったといいます。当事者だったお二人が、トンネルを抜けるまでのきっかけや、自分たちが今できることを語り合います(構成=篠藤ゆり 撮影=藤澤靖子)

<前編よりつづく

本を読む、ドラマを観ることが救いに

 私は学校に行きたくない時、本を読んでいました。斉藤さんはどうでしたか?

斉藤 僕はひたすらドラマを見ていました。昔の役者さんはバラエティ番組にも出ないし、素顔がわからない。素はどういう人で、どうやって役を演じているかに興味があって。僕には、「自分は存在してはいけない」という感覚もあったので、演じることで別の人間になれるのでは、とも考えていましたね。

 いじめから立ち直れた人の話を聞くと、本を読むのが好きで、つらいのは自分だけじゃないと思えたり、そこから自分を俯瞰して見られるようになったり、とよく聞きます。斉藤さんの場合は、それがドラマだったんですね。

斉藤 そうですね。映像だけではなく、中学時代から舞台を観に行ったりもしていました。

 それが今のお仕事につながっているわけでしょうね。

斉藤 そうかもしれません。

 私は進学校に行けば逃れられるかなと思って、少し頑張ってそちらに行ったら、学校が楽しくなりました。先生も「本当におまえは面白いな」と言ってくれて、けっこう人気者になって。人生が180度変わった気がしました。

斉藤 まったく一緒です。高校で進学校に行ったら、授業はすべて能力別。すると毎回、隣の席の人間が変わるから楽なんです。それにいろいろな人が話しかけてくれるようになって。そこからどんどん、人と話すのも、学校や部活も楽しくなりました。