無印良品の立ち上げのコピーを担当して
私が今も関わる「無印良品」もそうです。1970年代末に西武百貨店の社長だった堤清二さんやアートディレクターの田中一光さんなど企業人とデザイン関係者が発案し、私がコピーを担当しました。
過剰包装をやめ、クラフト紙の茶色の美しさを再発見する。質素でありながら豊かな生活を送る基礎を提案し、引き算の美学を謳う無印良品は、当時新しい価値観を提案しました。今はすっかり時代が追いついて、感慨深いです。世界で愛される商品が生まれた幸運な仕事でした。
デザイナーの三宅一生さんとは、彼がパリへ留学する前の62年に出会っています。輝くばかりに美しい青年でしたよ。三宅さんに誘われて手掛けたのが、75年に京都国立近代美術館で開催された「現代衣服の源流展」。衣服を「文化」としてとらえた試みは海外の美術界から評価され、私がその後、現代アートの世界に入るきっかけにもなりました。
友人に会いたい、美しいものを見たいという欲求を阻害することが、今回のパンデミックの恐ろしいところです。しかし先日、宝塚歌劇団の公演を観に行ったとき、ファンの方々が素晴らしいマナーで舞台を楽しむ様子に感動してしまいました。人がひとつの場所で出会って繋がり、共感する喜びを私たちは忘れていない。その心があれば、未来は明るく開けると信じています。