お尻パッドにサポーターでごまかして
ここ数年は、連休が近づくと憂鬱な気分になる。年金生活の夫婦にとって、2家族ぶんの飲食代はたいへんな出費だ。家計の心配をするだけでも気が滅入る。はっきり言えば、「ご飯を食べたら帰って」というのが本心。だけどそんなことを言ってはいけないと思っていたから、顔で笑って、心で泣いて、身体はへとへとになってしまった。
そんなことが数年続き、昨年の春、鏡を見たときに「あれ?」と思った。二の腕がたるんでいる。それはやせの始まりで、坂道を転がるように、どこもかしこもやせていった。1年後には、体中がシワだらけ。まるでぱんぱんに膨らんでいた風船がしぼんだみたいだ。顔はもともとシワが多かったが、今や「しわくちゃ」という表現がぴったり。
脂肪がなくなった二の腕に、縦ジワができるとは。太っていた頃のふくよかな胸も、しぼんでシワが重なっている。妊娠線が出ていたお腹の皮は、まるでゾウの皮膚のよう。「こんなところにも!」とびっくりしたのは、内股のもものつけ根にできたちりめんジワで、自分でも「怖っ」と思って言葉が出なかった。風呂上がりの自分の体を鏡で見ると、老婆そのものだ。
女性らしくふっくらしていた腰やお尻もぺったんこで、気に入っていたズボンもはけなくなった。老人化する自分の体を見るのは、寂しく耐えがたい。友達はよく太り、大きなお尻、股ずれしそうな太ももで、いつも羨ましくちらっと横目で見てしまう。
現在は体重43キロ。ぺちゃんこのお尻を隠すため、夏の暑い日でも、外出するときは通販で購入したお尻パッドをつけていく。腕を隠すために、トップスは七分袖。細くなった太ももには、冬用の厚地のサポーターをつける。
体は隠せても、顔は隠せない。ときどき顔を真上に向けて、手鏡で見る。たるんだ皮膚が顔のワキに下がり、シワがないように見えるのだ。ああ、こんな顔になりたい。今は本気で、顔のシワ取り美容形成を考えている。