不意打ちで襲われた病気の後、人はどのように気持ちを立て直すのか。生きる気力を取り戻した4人にお話を聞いた。4人目はユリエさん(56歳)。脳卒中で後遺症が残ってしまったが――(取材・文=島内晴美)
脳卒中で半身まひの後遺症が残った
ミサトさんと同じ脳卒中でも、半身まひの後遺症が残ってしまったユリエさん(56歳)の場合は、リカバリーも一苦労だった。税理士として十数件のクライアントを抱え、働き盛りの50代で病に倒れるのはあまりにも不運だ。
「3月の決算期に実家の母の死が重なり、ほとんど寝る暇もなかったんです。4月に入ってすぐの月曜日、仕事に出かけようと玄関のドアを開けたときに、ばったりと倒れてしまいました。夫が家にいたのですぐ救急車を呼んでくれて命は助かったんですが……」
2ヵ月の入院のあと、リハビリ病院に転院して半年経ち、家に帰るには帰れたが車イス生活になってしまった。入院中に、知り合いの税理士にクライアントを振り分けて業務をお願いし、急場をしのいだのだが、本人は頭が回らず電話もできず、夫がすべて差配してくれたという。
「一人息子は就職したばかり。夫が資格試験の勉強中でほとんど無職状態だったのが不幸中の幸いでした。介護が必要になった私につきっきりで看病してくれて。それでも入院中はまだましで、家に帰ってからは家事も介護も全部夫の仕事になりました」
もともと几帳面な夫は、介護日誌を付け、リハビリスケジュールを組み、妻の介護に精力を傾けた。3度の食事はもちろん、掃除、洗濯も夫の役目。
「苦にはならなかったようです。退院後は私が顧問をしていた会社の方や税理士仲間がお見舞いにみえた際、なかなか言葉が出てこない私の思いを代弁してくれることもありました」