顧問税理士に復帰してくれないかという提案が
自宅療養に入って1年が経ち、少しずつ身体機能が戻ってきたころ、元クライアントから顧問税理士に復帰してくれないかという提案があった。
「迷いました。業務をこなす自信が持てなかったこともありますが、夫の負担がもっと増えるだろうとも思って」
もうあきらめていた仕事への、復帰を決意したユリエさんは、当面は実務に専念。税務署に出向いたり、得意先と連絡をとったり、外回りは夫がすべて引き受けてくれた。
「手探り状態ではありましたが、少しずつ数字の勘も戻ってきました。仕事で頭を使うことで、気持ちも前向きになり、不思議なことに、運動機能にも好影響があるみたい。家の中なら車イスなしで歩けるようにもなったんです」
今も週に3回はリハビリのためデイケアセンターに通い、お年寄りに交じって、理学療法や作業療法を受けている。それが苦にならないのは、仕事をしているというプライドがあるからだとも思う。かつてのようにバリバリ働くことはかなわないが、無理せず、あきらめず、一歩ずつ進もうと思うユリエさんだ。
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病にかかることは不可抗力かもしれないが、病からのリカバリーもまた、見えない力に支えられるのだろうか。その回復の方法は千差万別。自分に合った方法で自分を取り戻すことができたら、そのときこそが病の癒えたときなのかもしれない。