不意打ちで襲われた病気の後、人はどのように気持ちを立て直すのか。生きる気力を取り戻した4人にお話を聞いた。一人目はエミさん(仮名、55歳)。40代で胃がんの宣告を受けてしまい――(取材・文=島内晴美)
胃カメラ検査でがんが見つかった
自分のからだと真剣に向き合うことができるのは、思いがけず病を得たときなのかもしれない。エミさん(仮名・以下同、55歳)が胃がんの宣告を受けたのは10年前、40代のときだった。
「健康には自信がありましたから、もう何年も健康診断を受けていませんでした。たまたま近所のクリニックに勤めていた友人が格安の人間ドックを紹介してくれて」
お得気分で受けた胃カメラ検査でがんが見つかったのだ。
「びっくりしたのと、やっぱりという思いが交錯しました。というのも父を胃がんで亡くしていましたし、母も胃がんで手術をしていたので、いつかは私もという予感はあって」
手術で胃の3分の1を切除。生活は大きく変わった。
「母は健在なので、再発への恐怖はまったくありませんでしたが、食生活が激変して苦労しました。まず、空腹を感じない。目は食べたがっているけど胃が受けつけないんです。消化が悪い根菜、キノコ、海藻、中華麺はNG。肉や魚も脂っこいヘビーなものは吐いてしまうので、チーズとクラッカーをちょびちょび食べる毎日でした」