「木は生きている」に登場した建築家が手掛けた、岩手県遠野市の「新民家」に古材を利用した建築。マツとスギを使用している(写真提供=丸順工務店有限会社)

木材の強度は100年かけて1.1から1.2倍に

「木は生きている」の登場人物たちは、材木屋に木を保管するスペースを取ってもらい、時間をかけて自然乾燥していると、取材の際に語ってくれた。木材の強度は100年かけて1.1から1.2倍になるという。伐採されて根が土から離れても、木は生きていて強くなっていく。

大工たちは国産の自然乾燥の木材を梁や桁、柱などの接合部に、「継ぎ手」や「仕口」といった凹凸加工を手刻みでほどこしている。そのような伝統的な工法で骨組みをつくった家は、年月を経て変化する木材がしっかり組み合わされているため、耐震性も高くなると聞いた。

執筆にあたり私は、北は北海道から南は鹿児島県まで取材に行った。東北ではヒバ、西日本ではスギやヒノキの林を見学し、年月を重ねてこそ魅力を増す木材につい勉強させてもらっている。吉野スギの産地として有名な奈良県川上村を訪れた時には、スギやヒノキの産地となったのは室町時代で、1500年頃に人工植林が始まったとことを知った。

安土桃山時代に豊臣秀吉が築いた、大阪城や伏見城などの多くの社寺建築に、吉野のスギやヒノキが用いられたという。苗木を植え、日当たりが良くなるように木が育つ環境を整えて、長いスパンで丁寧に木を育ててきた林業家たちが、優良な木材を生産してきた歴史がある。