サヤカさん(右)から森の仕事について教わるモネ。(NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』場面写真 (c)NHK)
7月3日には熱海市の伊豆山地域で線状降水帯による豪雨で土石流が発生。7月28日には1951年からの統計依頼初めて、台風8号が宮城県の石巻市付近に上陸した。年々激しさを増す猛暑や豪雨に、自然環境や気候の変化を実感する人も多いのではないだろうか。東日本大震災の被災地に生まれ、林業に携わるうちに気象の仕事を目指すことになった主人公を描く朝ドラ『おかえりモネ』は、木や森の大切さ、自然や気象と人間の関わりなどをテーマに描かれている。長年農業や森林について取材してきた作家・森久美子さんに、モネが携わった木の仕事や森の大切さについて寄稿してもらった

海育ちのモネが、山で成長していく

連続テレビ小説『おかえりモネ』(NHK総合/月曜~土曜8時ほか)の開始から2ヵ月が経った。主人公・百音(モネ・清原果耶)の成長を楽しみに、毎朝テレビをつける。

私は古民家情報誌『じゃぱとら』に、「木は生きている」というタイトルの小説を連載している。地域の風景や文化を残そうという思いで、国産の木材を使った住宅を建てたり、古民家を再生したりする大工や建築士たちが主人公の物語だ。地域愛、森林、木工品……「おかえりモネ」は、「木は生きている」の題材と重なる点も多い。

宮城県気仙沼の離島・亀島で育ったモネは、東日本大震災の日、高校の合格発表を見に仙台に行っていた。そこにいなかったせいで、津波に遭った家族の辛さや、身近な人を失った友人たちの悲しみをわかってあげられていないと、モネは気に病んでいる。震災から3年が経過した2014年春、高校卒業と同時に逃げるように気仙沼を離れた。

海の町から山の町・登米へ。モネは森林組合で、見習い職員として働き始める。下宿先は、祖父の知り合いで登米の山主であるサヤカさん(夏木マリ)の家だ。海育ちのモネには、山や森林についての知識がまったくない。サヤカさんや森林組合の人たちに教えられて、森林は河川を通じて海と繋がっていることに気付いていく。

サヤカさんの山には、成長に時間がかかる特徴を持つヒバの木がある。伝統芸能の登米能の舞台で笛を吹くサヤカさんは、将来能舞台の修繕をする日が来たら、樹齢300年のそのヒバを使ってほしいと考えているようだ。モネに山を案内したサヤカさんは、ヒバに手を当てて言った。