延命しない希望はきちんと伝えておくこと
在宅医療は自分の自由を優先できる半面、家族の協力が必要となりますから、希望される場合は家族間でよく話し合って理解を得ておくことが大切です。
加えて、いざというときに延命治療を希望するか否かについても元気なうちに伝えておきましょう。本人に意識がない場合、家族が判断することになってしまうので、人工呼吸器はつけない、食事がとれなくなっても胃ろうはしないなど、細かく自分の意思を伝えておくこと。これについては在宅に限らず、病院で医療を受ける場合も同じです。
在宅医療の場合、最期の瞬間は、ご家族だけで見送ることがほとんどです。私の経験からいうと、息を引き取るまでの経過を事前にお伝えしているからか、医師が立ち会っていなくても、みなさん慌てることはありません。人間の体はよくできていて、自然な状態で死を迎えると、そんなに苦しまずに逝くことができます。無理に点滴をしたり、心臓マッサージをしたりすると、かえって苦しむことも。
最後に、身内のいないおひとり様の場合についてお話しておきましょう。おひとり様でも在宅医療は可能です。医療チーム、介護チームの誰かは毎日訪問することができます。ただ、オムツが汚れてしまった、汗をかいたパジャマが気になる、といったことで誰かの手を借りたくても、病院や施設のようにすぐに対応できるわけではありません。「少々のことは平気。住み慣れた場所で自分らしく」と思うタイプか、「気持ち悪いのはダメ。すぐなんとかしてほしい!」と思うタイプかで、向き不向きがある程度判断できます。
たとえ、一人でそのときを迎えたとしても、それは「孤独死」ではありません。また、家族がいても独居の人は、在宅医療をお子さんに反対されるケースも少なくないようですが、自分の最期の過ごし方ですから、家族に理解を求め、悔いのない選択ができるよう願っています。