イラスト:角愼作
東京・上野にある国立科学博物館で開催中の特別展「植物 地球を支える仲間たち」が熱い。じっとしていて一見地味な植物たちを、総合的に紹介する大規模な展覧会は初だとか。光合成という能力を手に入れた植物たちは、実は「最強」なのでは? 

京都大学農学部を卒業、スミソニアン研究所を経て農学博士として研究を重ね、『植物はすごい』などの著書を上梓している田中修先生に、植物の不思議や進化、知られざる特徴を教えてもらった。今回は、香りで身を守る「ヒーリング植物」の仲間から、虫除けや建築材として長年人間とも共存してきた2つをご紹介します

クスノキは香りを発して虫からからだを守る

みなさん、「ショウノウ」はわかりますか? 
漢字で書くと樟脳。昔から衣類の虫除けに使われている成分です。

このショウノウはクスノキがもっている香り成分で、樹木が発散する「フィトンチッド」の一種。人間が浴びるとリフレッシュするため、森林浴をすると気持ちがいいのです。
しかし、虫除けに使われていることでもわかるように、虫にとっては臭くて嫌な香り。クスノキはこの香りを発し、虫からからだを守っているのです。

この香りは、葉を傷つけると強く発散されるので、虫たちが葉をかじると、途端にひどい目にあってしまいます。くわばらくわばら、君子危うきに近寄らず。

フィトンチッドは私たち人間のためだけでなく、虫に嫌な思いをさせないように発している警告サインでもあるのかもしれませんね。

*クスノキの花言葉は「芳香」。初夏に淡黄色の小さな花を咲かせ、晩夏から秋に小さな黒い実をつけます。

クスノキ

【学名】Cinnamomum camphora
【原産地】日本、台湾、中国、インドシナ
【特徴】フィトンチッドの香りを発して、虫からからだを守っている。