イラスト:小林マキ
相手に不満はありながらも、なんとか続いてきた結婚生活。でも相手の実家の墓には入らず死んだあとぐらいは自由にしたい。供養とは、一体なんだろう。立派すぎる戒名や、高いお布施は子どもたちに負担をかけるだけ。私たちが最後に選ぶ、骨をうずめる場所とは。市田さん(53歳、仮名)の体験は――

がめつい寺から離檀したい

「上行結腸がんのステージ4です」。昨年の秋、夫が医師から告げられた病名である。

ステージ4──そんなに進行していたのか。50代の夫は、真面目で几帳面、ここ5年間、休みは月に1日だ。だからこうなることも、どこかで覚悟していた。夏ごろから「胃の調子が悪い」と言っていた夫は、近くの内科で処方された薬を2週間ほど飲んでいたが、いっこうに改善されない。

夫の家系には胃がんになった人が多く、4人の親族のうち3人が胃がんで他界している。夫には喫煙の習慣があるので心配になり、すぐに総合病院で胃カメラ検査の予約をした。ほぼ間違いなく胃がんだろうと思っていたが、医師は「念のため大腸も一緒に調べましょう」と提案してくれ、胃と大腸の両方を検査することに。

その結果、大腸がんの一種である上行結腸がんと判明した。たしかに、春先のハイキングでもハァハァと息切れし、やけに疲れて見えた。そのときすでに、夫の体は悲鳴を上げていたのだ。

私は夫と仲が悪いわけではないし、一緒のお墓に入ってもいいと思っている。ただ私は、合理的であることを好むので、夫の実家の古い価値観とは合わないから困る。夫の実家は菩提寺の総代をしており、戒名は100万円の院号を当たり前のようにつけている。当然、その後の法事もすべてこの戒名のランクに従い、お布施の金額も変わる。