(左)町田その子さん(右)辻村深月さん(写真◎本社写真部)
全国の書店員がお客様にお薦めしたい本を選ぶ「本屋大賞」。受賞作は毎年ベストセラーになりますが、2021年の受賞作、町田そのこさんの『52ヘルツのクジラたち』も、多くの読者を得ています。 18年の受賞者、辻村深月さんと町田さんは同い年。同世代だけにそれぞれの歩みや影響を受けた作家など、通じ合うところもあるようで──(構成=内山靖子 撮影=本社写真部)

うまく言葉にできない葛藤

辻村 町田さんがデビューするきっかけとなった「R-18文学賞」で、私は選考委員を務めていたでしょう。自分が選んだ方が本屋大賞を受賞されたことは、まるでわがことのように嬉しい。受賞作の『52ヘルツのクジラたち』では、母親に虐待されているある子どもに、主人公が人生の選択肢を増やしてあげようと手を差し伸べる姿が描かれますよね。その過程が素晴らしい。

町田 当初はラストを決めずに書いていたんですけど、「あの子を救済する方法をひとつだけ見つけよう」と決めてから、物語が進み出したような気がします。

辻村 町田さんが「R-18文学賞」に応募されたのは5年前ですよね。どういう経緯であの賞に応募しようと思われたのですか?

町田 それまでは若い女の子向けのケータイ小説を書いていたのですが、箸にも棒にもかからなくて。そんな時、文学賞への応募を友人に勧められたのがきっかけです。辻村さんも、もうひとりの選考委員の三浦しをんさんも大好きだったので、「応募すれば、自分の作品を読んでもらえる!」と。

辻村 光栄です。

町田 私、辻村さんがよく小説に書いていらっしゃる「集団の中で抱く孤独感」に、すごく共感を覚えるんです。小学生の頃、いじめにあっていた時期があったのですが、自分が感じていた「学校に行けない。でも、親にも言えない」という、うまく言葉にできない葛藤がみごとに文章で表現されていて。だから辻村さんに、私の言葉を読んでもらいたかった。