睡眠中に脳内で作られる2つの物質が重要

「ここ1ヵ月間、あなたは睡眠で休養が充分とれていますか」

厚生労働省の平成29年国民健康・栄養調査による、睡眠の質を問う設問に、40代は30.9%、50代では28.3%の人が「とれていない」と回答。このうち40~50代の女性は50%を超える人が、平均睡眠時間は6時間未満と答えています。

「これでは日中、満足なパフォーマンスを発揮できないでしょう。心身の老化も加速してしまいます」と警鐘を鳴らすのは、睡眠コンサルタントの友野なおさんです。

睡眠は、一日中働いた脳と体をリカバリーする時間。ノンレム睡眠とレム睡眠が約90分サイクルで入れ替わり、大切な役割を果たしています。

ノンレム睡眠は、呼吸や心拍数、血圧、自律神経系の機能などが休息モードになる眠り。脳内では脳脊髄液が巡って脳の老廃物を排出します。他方のレム睡眠は、脳の神経細胞が活発に働く情報処理タイム。記憶や思考、感情などを整理する眠りで、健康な精神活動の維持に欠かせません」(友野さん。以下同)

友野さんは、睡眠中に脳内で作られる2つの物質が重要だと言います。

「まず『成長ホルモン』。新陳代謝の活性化と細胞の修復に必須のホルモンで、寝入りばなに出現するノンレム睡眠の深い睡眠時に最も多く分泌されます。もう1つは『メラトニン』。眠りを誘う神経伝達物質で、細胞を傷つける活性酸素の除去に働く抗酸化物質でもあります」

いずれもアンチエイジングの強い味方。慢性的な睡眠不足が続くと、これらの分泌が減少し、脳と体の疲労=睡眠負債が溜まり、さまざまな病気のリスクが上昇することに。

「各国の主な臨床研究によると、健康的な睡眠時間の目安は6.5~8時間です。それより恒常的に短くなると免疫力の低下が目立ち、肥満や糖尿病、脂質異常症、脳血管疾患、心疾患などの生活習慣病にかかる人の割合が増加。さらに、うつ病や認知症、がんの発生率が高まるという報告もあります」