イラスト:網中いづる
ありえない、でも確かに感じる。突然わが身に起こった奇怪な現象。そこに込められたメッセージとは――。富田里沙さん(41歳・仮名)は、大学の講義で教授が唐突に言った「じつは、ここの学生寮はいろいろ出るんだよ」の言葉で、子どもの頃に見た武者の姿を思い出した。当時住んでいた家では、鳥やカメなどがすぐに死んでしまったという…

忘れていた記憶が呼び覚まされて

それは大学3年生の教育哲学の講義中のことだった。大きな講堂にほぼいっぱいの学生たち。昼食後とあって、教授の一本調子の話がうとうとと眠りを誘い、すでに机に突っ伏している者もいる。私もかろうじてテキストを開いていたものの、睡魔に襲われて半眼に。

そしていつもなら講義の終了間際に、暗号のようなドイツ語や英語、漢字の混ざった板書をノートに書き写して終わるはずだった。

だが、その日は違った。教授がまったく唐突に「じつは、ここの学生寮はいろいろ出るんだよ。戦で死んだ武者とかね」と言ったのだ。学生たちが講義にあまりにも興味を示さないので雑談に走ったのか。

しかしその声が私の目を覚ましたうえ、私の中で眠っていた記憶を引きずり出した。この日まですっかり忘れていたことだったが、私は見たのだ、その「武者」を……。というか、対面したのだった。