池上 要因は人それぞれですが、ひきこもる人の多くが就労経験者なのは、職場で受けたパワハラ、モラハラ、人間関係のこじれなどの社会的ストレスが引き金となるから。特に学生時代にいじめや暴力を受けた過去があると、その当時は不登校にならなかったとしても、上司の怒鳴り声でフラッシュバックしてしまうんです。

岩井 家族にとっては突然でも、本人には引き金となる出来事があったんですね。

畠中 私の相談者には、発達障害が理由で社会生活を順調に営めず、ひきこもってしまう人が多いんですが、日本の最難関大学に入学したあと履修届の仕組みや手順がわからず、退学した人もいました。

岩井 なんじゃそれは! せっかく受かったのに、もったいない。

池上 発達障害は脳の特性によるもの。試験問題を解く記憶力は優れていても、手続きといった事務作業や、わからないことを人に尋ねるコミュニケーションが苦手だったりします。だからそれまで順調な人生だと思っていたのに、進学や就労をきっかけにひきこもってしまうことが起きるわけです。

 

あなたの育て方は間違っていたわけではない

岩井 実は私には、28になる息子がいまして。ひきこもりではないんですが、その日暮らしのアルバイト生活。定職に就いたことがないんですよ。恥ずかしながら家賃も私が払い、小遣いも与えております。ただあと20年もこの状況が続いたら、と思うと不安で不安で。

畠中 お子さんは、息子さんだけですか?

岩井 いえ、息子の上に娘もいます。私は岡山で最初の結婚をして、なんやかんやあって離婚したとき、子どもたちを夫のところに残してきたんです。それでも息子は中学を卒業後、「お母さんのところに行きたい」と東京にやってきました。大学では映画の勉強をし、監督や脚本家や役者など、いわゆる映画まわりの夢を追い続けるままに親のすねをかじっているわけです。