子供に求められる「稼ぐ力」
一流企業に就職したからといって、一生安泰とは言えない時代。そうした時代を生き抜いていく今の子供たちに必要なのは、「稼ぐ力」です。「稼ぐ力」とは、会社を頼らず、どんな状況になっても、自分と自分の家族の食いぶちくらいは稼ぐことができる才覚のことです。
日本は今、急速にアメリカ型の社会に移行しています。それがコロナ禍を機に加速し、会社が一生の職場ではなくなりつつあります。
すでにそうした時代の到来を察知している若い方の中には、大学に通いながら起業をしたり、大学に行かずに職人のようなスペシャリストの道を選ぶという生き方を始めている人もいます。
けれど、大部分の子供たちは、まだ親から言われるままに塾に通い、学校の成績を上げることだけが人生の最良の選択だと思い込んでいます。なぜなら、親が「うちの子には特に得意なことがないから、とりあえずいい学校を出ておいた方が、何かと得をするだろう」と考えているからです。ただ、それで本当に子供が幸せな人生を送れるのかといえば、疑問です。
若者の4人に1人は3年以内に会社を辞める
2015年、東京大学を出て大手広告代理店の電通に勤めていた高橋まつりさん(当時24歳)が激務に耐えかねて自殺した事件は、多くの人に衝撃を与えました。
今まで「大手企業に入社さえできれば、あとは定年まで楽に暮らせる」と思われていたのですが、現実はそうではないということを、電通という大企業で起きた事件に痛感させられたのです。
厚生労働省の「令和2年版自殺対策白書」を見ると、若い世代の死因のトップは自殺。特に会社の勤務で悩む20代の自殺が年々増えています。
自殺にまで至らなくても、誰もがうらやむ大手企業に勤めながら辞めてしまう若者は多くいます。「新規学卒就職者の離職状況(平成28年3月卒業者の状況)」(厚生労働省)を見ると、大学を卒業して従業員数1000人以上の大企業に勤めた若者の3年以内の離職率は25%。つまり、4人に1人は会社を辞めてしまっているということ。この中には、高橋さんのように過酷な仕事に追い詰められた人も多いことでしょう。