重量挙げはとても奥深いスポーツ
ウエイトリフティングは、バーベルを一気に頭上まで持ち挙げる「スナッチ」と、いったん肩まで上げてから全身の反動を利用して頭上に挙げる「クリーン&ジャーク」をそれぞれ3回ずつトライし、最も重い記録の合計で争います。
私の自己最高は11年の全日本選手権で記録したスナッチ90kg、ジャーク117kg、トータル207kg。でも、東京に向かう数年間は170~180kg台がマックスでした。メダルを獲るには200kg以上挙げないと厳しいと踏んでいたので、体を何とかコントロールしようと心で踏ん張ってきた。でも、それがなかなかうまくいかないと、心のほうも落ちてしまって……。
重量挙げは重いバーベルを挙げるという一見単純な競技に見えますが、実はとても奥深いスポーツなんです。私たちがなぜ、自分の体重の2倍以上の物体を頭上に挙げられるかというと、地面の反発力を使って、全身の力を一気に集中させる技術があるからです。力だけでは挙がりません。心技体のバランスが重要だし、結果的には人間の能力の限界を究めようとする競技でもありますね。
持っている力を最大限に発揮するコンディションのピークの作り方も難しい。私は4年に一度の五輪を最大の目標にし、その間に行われる世界選手権や全日本選手権などに合わせてピークを持っていきますが、そのためには、最低3ヵ月前から準備が必要です。食事、練習メニュー、睡眠などすべて計算し、計画通りに24時間を刻んでいきます。それがちょっとでも崩れると完璧なパフォーマンスが発揮できない、繊細な競技でもあるんですよ。
五輪のために4年間準備してきたものが、ほんの1~2秒で終わってしまう刹那的な側面も。だからこそ、面白いんですけど。
ウエイトリフティングを始めてから21年になりましたが、まだまだわからないことだらけです。この競技をロジカルに分析してみたくて、2年前に筑波大学大学院に入学。自分自身の競技生活を分析した論文を書き、今年3月に卒業しました。客観的に自分を捉える作業は難しかったけれど、いい勉強になりました。