母の心の叫びが聞こえた
村井 カータンさんのブログは10年以上前から読んでいます。
カータン ブログは14年前、次女が8ヵ月くらいの頃に始めました。その子がもう、中学3年生に。
村井 うちの双子の息子たちも同じ歳なので、中3です。
カータン 当初、子育ての記事が多かったブログに、親の介護のことを書くようになるとは……。
村井 同年代のカータンさんに介護が始まったのなら、私が介護しているのも当然だと、ちょっと安心しました。ブログから介護にまつわるエピソードをまとめた『親のトリセツ』には、「あ、うちと同じ」と、うなずくことがいっぱい! そして、絵が可愛くて面白いうえに、介護認定やデイサービスなどの情報の内容が濃くて素晴らしいです。
カータン 私は村井さんのエッセイのファンで、『全員悪人』も読みました。認知症になった本人の語りで書かれていて、目から鱗が。うちは開けっ広げに何でも言い合う家族で、「ごめんね、ママ、ちょっとボケてるから」と言う母に、「ううん、ちょっとじゃないよ、相当だよ」と突っ込むのもアリなんです。だけど、他人が読んだら、「母をバカにしている」と受け止められるんじゃないかという不安が常にあって。村井さんの本では、認知症の方の一人称で書いているから悪口にならないし、誰も傷つかない。「すごい、この視点!」と感動しました。
村井 わが家に起こった事実に基づき、認知症となった義母の目線で書くことで、私もこの病についての理解が深まりました。
カータン お義母さん、ヘルパーさんが来ると「知らない女に家に入り込まれた」と思うんですよね。
村井 知らない女がキッチンを牛耳って夫の好物を作るので、「私には居場所はない」と言います。
カータン 私の母と重なりました。ヘルパーさんが入ってきた時、母はウワ~ッと荒ぶる犬のようになってしまって。「ここは私がずっと守ってきた家で、私は洗濯もできるし、ごはんも作れる」と。本当はできないんですけどね。この時、「なんで私を役立たずのように扱うの?」という母の心の叫びが聞こえたんです。だから村井さんの本の中でお義母さんが「私は失格の烙印を押された主婦になった」と嘆くところ、思いが伝わって、私も泣きました。